解糖系に寿命はあるのか?

生物界3ドメイン

生物界は真性細菌、古細菌、真核生物の3ドメインに分類されます。身近に目視できる、動物、植物、菌類などは全て真核生物です。真性細菌と古細菌はどちらも原核生物で見た目は変わりませんが、RNA塩基配列を調べると、大きく異なることが判明し、全く進化系統樹上で異なることが解りました。

系統樹

38億年以前から始まった生物界は、現在3つのドメインに大きく区分けされます。 約20億年前に、嫌気性真核生物にエイリアン(ミトコンドリア:αプロメテオ細菌)が進入しました。 それから8億年の間、なかなか共生できずに苦悩の時代を繰り返した。 嫌気性真核の激しい細胞分裂にミトコンドリアが付いていけず、薄まってしまってしまったことなどが原因らしいとも言われているが、実は、ミトコンドリア群がその勢力を徐々に増し、力関係が逆転して、母体が生きにくくなるためだと思う。

そして、終に、子孫を残すことにより、変異した遺伝子情報を残していくことができるようになった。

更に、単細胞生物から個々の細胞が分業する共同生活形態の多細胞生物へとカ5臆5千年前のカンブリア爆発となったのです。 人間は、この進化の最先端で生きていて、他の動物と同様に2つの生命体の代謝機能を持っています。 この2つの異なる生命体の機能は理解することは、人間の寿命を知るためにとても重要なことなのです。 ここでは、その生命体のひとつである解糖系のDNAについて見て行きたいと思います。

解糖系

それは、太古の昔からの嫌気性真核生物の代謝機能です。 解糖系(かいとうけい、Glycolysis)とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解(異化)し、グルコースに含まれる高い結合エネルギーを生物が使いやすい形(ATP)に変換していくための代謝過程である。 この嫌気性真核生物は、太古の化学合成独立細菌*Note 1)が作ったグルコースを分解して、エネルギーを得ています。 そして、この解糖系は、酸素を必要としない。 細胞が無酸素状態でグルコースからATPを作る反応を嫌気性解糖系といいます。 この点が、もうひとつの生命体(ミトコンドリア)とは、異なる点です。 ミトコンドリアは、酸素を利用して、エネルギーを生成しています。 下図のように、グルコースからピルビン酸まで分解したあと、酸素があればTCA回路(クエン酸回路)と電子伝達系による酸化的リン酸化によってATPを生成しますが、酸素が無い場合はピルビン酸からさらに

アルコール(酵母)や乳酸(筋肉や乳酸菌)などに分解します。

ほとんど全ての生物が解糖系を持っており、もっとも原始的な代謝系とされています。 この嫌気性真性細菌の糖代謝系をエムデン-マイヤーホフ経路(以下EM経路)と呼びます。 EM経路では10数種類の酵素が関与しており、無酸素状態でもエネルギー通貨であるATPを生産することが可能です。 アデノシン三リン酸(ATP)は、全ての生物が使う生体エネルギーの素、基本エンルギー単位です。 ATPが細胞内に行き渡り、そこで分解されるとき、リン酸基の結合に使われていたエネルギーが放出されます。 そのエネルギーを使い、生物は生きています。 ATPの分子式: Note 1) 化学合成細菌(独立栄養) 初期の生物の代謝と考えられます。様々な代謝反応があり、無機化合物を酸化してエネルギーを得る細菌で、硫化水素、アンモニア、水素などを利用します。多彩ではありますが、効率は悪く、その後生物界での主流とはなっていません。いくつもの可能性の中で、たまたま獲得した反応だったということでしょう。これらの中から、進化への道を進み始めたものがいました。

動物の寿命

寿命と言う概念は解糖系単独の生物(大腸菌、古生細菌)にはありません。 生きることができる環境条件さえ揃っていればいつまででも生きることができ、寿命というものがありません。 老化と言う概念は、嫌気性生物遺伝子(解糖系)単体にはないのです。

また、ミトコンドリア自体にも寿命というものはありません。両者が共生するようになったために(動物には)、寿命という概念が生まれたと言えます。

我々は、幼少期には、解糖系で主にエネルギーで生き、成人になると、解糖系とミトコンドリア系のエネルギーが1対1の比率になり、 老年になると、ミトコンドリア系が主にエネルギーを生成するようになります。

何故、我々は、エネルギー生成系の割合を加齢とともにシフトしていくのか? その解が見つかれば、老化を止めることも不可能ではないかも知れません。

antiage

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