ミトコンドリアの老化に伴う機能低下

目次

  1. 老化に伴うミトコンドリアの数の変化
  2. ミトコンドリアの変異
  3. ミトコンドリアの分裂と融合
  4. 老衰はミトコンドリアの機能低下

 

老化に伴うミトコンドリアの数の変化

繊維芽細胞のミトコンドリアの数は、老化に伴い変化していなかった。

  人間は、解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー生成系を持っているが、老化に伴いミトコンドリア系が主流になることが知られている。

それでは、ミトコンドリアが老化と共に増えるからミトコンドリア系が主流になるのだろうか。   コーセーが実施した、同一人物の長年に亘る皮膚の繊維芽細胞を調べた結果、ミトコンドリアの数には殆ど変化が見られなかった。 また、スーパーオキシドディスムターゼ2 (SOD2)という活性酸素消去酵素の量を測って、ミトコンドリアの質の変化を観察した。

注)スーパーオキシドディスムターゼ 2 (SOD2) 活性酸素消去能をもつ酵素の一つで、細胞内のミトコンドリア内に存在します。これまでの研究において、組織の老化や個体寿命への関与が知られています。  

その結果、被験者が36歳の時に比べて、67歳の時点ではSOD2の量が約50%減少していた。  

繊維芽細胞におけるミトコンドリアの数に変化がなかったが、他の部位については、調べていないので同様に数の変化がないかどうかは分からない。 仮に、老齢になってもミトコンドリアの数が変らないとすると、活性度低下のためミトコンドリア系のエンルギー産生能力も低下している。   ミトコンドリア系のエネルギー産生が低下しているにも関わらず、老人はミトコンドリア系が主流であると言うことは、解糖系がもっと衰弱しているということになる。   老人は活動的でなく、動作ものろく、エネルギッシュではない。 エネルギー産生能力が落ちたためかな~?  

老人は、ミトコンドリア系が主流になるが、そのミトコンドリア系のエネルギー産生能力も落ちている。

 

ミトコンドリアの変異

加齢に伴いミトコンドリアDNA(mtDNA)には変異が蓄積する。 その原因は活性酸素による傷害、およびDNA複製に校正機構が無いためと考えられている。

mtDNA上の変異の蓄積はエネルギー産生能の低下とさらなる活性酸素の産生をもたらし、結果として細胞・器官の機能の低下を起こす。 加齢にともないmtDNAに蓄積する変異には、大きな再編成と塩基置換変異がある。 大きな再編成は、mtDNA上に存在する反復配列間の組み換えが原因となる。

また、高齢者のmtDNAのD-loop領域に1塩基置換/挿入/欠失変異が高頻度に起こっていることが報告されている。 さらに老齢者の繊維芽細胞のmtDNAにはT414G 変異が、また骨格筋のmtDNAにはA189GとT408A変異が高率に認められることも報告されている。

このように、ミトコンドリアには自己修復機能がないと言われていて、塩基配列や塩基の置換が起こり老化と共に機能低下が徐々に蓄積している。   遺伝子の塩基配列が置換されたり、失われたり、新たに加えられたり、短い繰り返し配列の反復数が違うなどの個人差が存在し、その頻度が一般人の中で1%以上 である場合はDNA多型と称する。 DNA多型は核DNAにもミトコンドリアDNAにも存在する。  

複数の百歳以上のヒト(百寿者)のmtDNAの全塩基配列を決定したところ、百寿者において頻度の高い遺伝子多型がいくつか見付かった。 例としてmtDNA上の5178番目の塩基にはA(アデニン)型(Mt5178A)とC(シトシン)型(Mt5178C)があり、日本人におけるMt5178A型の頻度が約28%であったのに対し、11例の百寿者では82%と有意に高い頻度を示した。   このことから、ミトコンドリアの状態が長寿と密接に関係していることが分かる。  

ミトコンドリアの分裂と融合

生きた細胞の中では、ミトコンドリアは融合と分裂を頻繁に繰り返しながらその形態をダイナミックに変化させてる。 ミトコンドリアは細胞応答・組織分化時にダイナミックに形態を変化させる。 しかしなぜミトコンドリアは融合・分裂するのか、その生理的意義はほとんど理解されていません。  

最近の研究からミトコンドリアの膜構造形成に関与する遺伝子が同定され、このミトコンドリアの形態変化によってアポトーシスが制御されている。 ミトコンドリア形態形成遺伝子の変異が神経変性疾患の原因となることがわかってきました。  

老衰はミトコンドリアの機能低下

我々は、ペットの犬も猫も老衰して死んでいくのを見ている。 全ての動物が老衰で死んでいくので、人間も同じように老衰して死ぬのが、当たり前のように思えてしまう。  

しかし、生物界を広く見ると、老衰するのは真核生物のみで原核生物(真正細菌、古細菌)は老衰しない。

その2つの違いは何かというとミトコンドリアというバクテリアが細胞内に入り込んでいるかどうかの違いである。   その点から考えると、老衰にミトコンドリアが深く関係していると推測するのが自然である。   最近研究が盛んになってきたが、まだ、ミトコンドリアのことについては分からないことばかりだ。

しかしながら、アポトーシスや変異したミトコンドリアの作用から、ミトコンドリアが老衰にどのように関係しているか少しづつ明らかになて来ている。  

ミトコンドリアの再活性化を上手にすることができれば、長寿は実現でき、不老不死に繋がるのではないかと思う。

 

antiage

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